ふるさと納税で野菜界の至宝「自然薯」を食べてみた

ふるさと納税の謝礼品として、野菜はよく見かける特産品だ。われわれ調査隊としても無視はできない存在だが、収穫期の関係で基本的に期間限定商品だし、内訳がよくわからない詰め合わせが多いし、あるいは量が多すぎて食べきれそうになかったりと、なかなか難度の高いジャンルだ。しかし、高級だったり珍しかったりする「特別な野菜」ならば、ここで取り上げてもおもしろかろうということで、われわれ調査隊はソコソコの高級食材である「自然薯」に目をつけた。
いわゆる「トロロ芋」および「山芋」にはふたつの種類がある。ひとつは中国原産のナガイモで、一般に広く使われるトロロはこれをすったものだ。もうひとつの自然薯(じねんじょ)は、和名をヤマノイモという日本原産の野菜。どちらもヤマノイモ科ヤマノイモ属の植物だが、その粘りっぷりには大きな差があり、自然薯はだし汁でのばしたりしないとトロロとして食べにくいほど粘性が強い。一方のナガイモは、すりおろしてそのままさまざまな料理に使えるので、一般的な人気が高い。トロロそばやお好み焼きなどでよく使われるのは圧倒的にナガイモのほうである。
しかしナガイモはあくまで17世紀に入ってきた新参者。その活躍と人気は助っ人外国人選手のそれだ。日本古来の「真のトロロ」は自然薯でのみ味わえる、いや、味わってみたい!ということで、鳥取県へのふるさと納税を口実にトライしてみることにしたのだった。

鳥取県の洗練されたふるさと納税システム

鳥取と聞いて思い浮かぶのは「砂丘」と「過疎」。両者のイメージが合わさって、なんとも荒涼とした県なのか、モヒカンの男たちが水やガソリンをめぐって争っている世紀末県なのかというと、決してそんなことはない。しかし日本でもっとも人口の少ない県であるのはたしかであり、それはニアイコールで税収が少ないことをも意味する。そんな鳥取では、早くからふるさと納税に力を入れているという印象がある。非常に応援しがいのある県だ。
今回ふるさと納税をおこなったのは市町村でなく鳥取県だったが、専用のサイトを立ち上げていて、システムも大変よくできている。ゆるキャラ「とりっぴぃ」が歓迎してくれるこのサイトで、簡単にふるさと納税の手続きをすることができ、クレジットカードほか支払方法も多様で、とても多くの特産品が謝礼として用意されている。ポイント制を採用しており、寄附金額に応じたポイント内で特産品を選ぶことができる。
われわれ調査隊が選んだのは「自然薯ギフト(期間限定)」。7ポイントの商品なので20,000円の寄附をした。2015年2月の初めに申し込んだが、その際、フォームのコメント欄に希望の配送日を記した。後日、提供元の自然薯屋おおえさんからメールで連絡があり、時刻も指定できるとのこと。商品は約2週間後、指定の日時に届いた。日時を決めなければ、もっと早く届くのかもしれない。丁寧な対応でとても好感が持てた。

細い、長い、でも、たくましい!

自然薯は細長い箱におさまってやって来た。折ってしまったら価値が下がるので、自然薯を掘り出す際には厳重な注意がいると聞いたことがあるが、箱のなかでさらに緩衝材にくるまれており、おおえさんの自然薯愛が感じられた。オマケとして、数粒の「むかご」(山芋の球芽)もついてきた。


自然薯箱画像

緩衝材を脱がしてビニールから出す。長いのが2本に短いのが1本。仲むつまじき自然薯三兄弟である。計測したところ、長男の長さは94cm、重さは562gだった。次男は86cmで536g。三男は70cmと比較的チビながら、体重は536gで次男と変わらない。ケンカになった場合、次兄に勝つこともあるだろう。


自然薯開封画像

そんな三兄弟は一様に剛毛だが、土はついていなかった。こん棒のようにどっしりしていて、そう簡単には折れそうにない。なかなか細マッチョな兄弟である。


トロロへの道も細くて長い

われわれ調査隊は自然薯をトロロごはんにして食べることにした。まずはコンロの炎であぶってヒゲを焼く。チリチリと火がついて、自慢の剛毛はちぢれて目立たなくなった。そののち、皮がむけない程度にやさしく洗い、適当な長さに切った。


自然薯調理画像

おろし金は目が細かいほうがよい。プラスチックに刃のついたおろし金を使ったが、金属のほうではなく、ボツボツの突起がならんだ部分ですりおろすことにした。ゴシゴシと少しずつ、すりつぶすようにおろしてゆく作業は、けっこう大変だ。


自然薯おろし画像

すりおろし始めてすぐに、これがナガイモとは別種の植物であることを思い知らされる。すられた分はなかなか落下せず、おろし金にウネウネと張りついている。ようやく、みずからの重みでボトリと落ちる。受け止めるすり鉢のなかに、白と赤茶がまだらになった謎のペーストが積みあがってゆく。この姿は、正直まったくおいしそうには見えない。


自然薯出汁と合わせる画像

ひとしきりすりおろしたところで、このまだらのペースト塊を、食べやすいトロロへと変身させる作業に移る。だし汁を混ぜ込みながら、のばしてゆくのだ。カツオ、昆布、塩、醤油で作っただし汁を少しずつ加えながら、すりこ木でゴリゴリのばす。噂どおり、まるでお餅のような粘度で抵抗してくるが、だし汁を加えるごとにだんだんとおとなしくなる。そしてついに、あの得体の知れなかった物体は、ごはんにかけても違和感ないレベルのトロロ姿へと変貌したのだった。


自然薯伸びる画像

やっと食べられる!と、われわれ調査隊は歓声をあげた。が、しかし、すり鉢からおわんに移すのにひと苦労あった。自然薯の驚異的な粘りはいまだ健在で、鉢をひっくり返してもなかなか落ちてゆかない。生まれて初めて見るトロロのカーテンは壮観でさえあった。


ついに自然薯トロロごはんを実食!

ともあれ実食にこぎ着けた。自然薯トロロの相棒として、われわれが用意したごはんは、やはり麦ごはん。しかし、あえて特別なものではなく、レンジでチンするS&Bのパックライスを選んだ。自然薯の実力だけを評価するために、それがよいだろうという判断だった。


自然薯と麦ごはん画像

ごはんに乗せて食べてみる。口あたりからして、まったくナガイモとは異なる。重量感があり、トロロといえどもぜんぜんトロトロしていない。それでいて、口どけはふわりと軽快。ふくよかな山芋の風味が口のなかに広がってゆく。食感も風味も、これが本当の山芋か!と感激してしまったが、べつにナガイモがニセモノだということはないので、とにかく別種のトロロなのだと実感したのだった。
難点は、自然薯のほうにはない。麦ごはんが思いのほかおいしくなかったのと、もっとだし汁でのばしたほうがよかったかも、という調査隊の自責だけがある。上質なトロロには、それを受け止めるに足る上質なごはんが必要だったし、もっとのばしたほうが、より食べやすかったろう。自然薯あなどるなかれ、との教訓を得た次第である。


初心者におすすめのふるさと納税

鳥取県の「自然薯ギフト(期間限定)」は、ふるさと納税サイトの使いやすさや対応の親切さも含めて、かなり満足のゆく特産品だった。自然薯の量も多いので、トロロごはんだけでなく、トロロそばやお好み焼き、あるいは輪切りにして焼いたりと、いろいろためして楽しめるだろう。実用性の高い商品だと言える。


自然薯イメージ画像

なかば勝手な想像ではあるが、ふるさと納税に財政の活路をひらこうという鳥取県の意気込みが、非常によい形で結実しているにちがいない。残念ながら自然薯は冬季限定商品だが、ほかにも魅力的な特産品がたくさん用意されている。特に初めてふるさと納税をしてみたいという人には、プロセスが洗練されていて特産品も豊富な鳥取県への寄附がおすすめだ。また、たとえば関東あたりの大都市にあぐらをかいて、寝てても税金ガッポリというイケ好かぬ自治体にお住まいの人は、ぜひ鳥取のような、けなげにがんばっている自治体をふるさと納税で応援していただきたい。


2015年9月14日

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