ふるさと納税で山陰ブランド蟹「松葉ガニ」を食べてみた

野菜や果物、そして生鮮魚介類は、ふるさと納税では基本的に「期間限定」のプレゼントになっている。収穫期や漁期が決まっており、保存がきかないので、それは宿命的な制約なのだろう。受付期間が限定されるパターンや、発送期間が限定されるパターン、またはそれら両方とものパターンがあるが、いずれにしても、旬の時季になって申し込んだのでは遅い場合が多い。期間限定の上に数量限定だったりもするので、受付期間の満了を待たずして募集を打ち切られてしまうことも多々ある。
特に魚介類は、漁獲量によって供給できる数が大きく左右されるので、ふるさと納税の謝礼品としてはあまり向いていないのかもしれない。干物などの加工品は多く見かけるが、生鮮魚介類は希少とは言わぬまでもバラエティにとぼしいのが現状だ。
そんな状況のなかでも、アイツだけは特別だ。ネット通販界の定番商品でもあるアイツだけは、時期さえまちがえなければ、ふるさと納税でも比較的、容易に出会うことができる。

冬の味覚のキング・オブ・キングス「松葉ガニ」

冬のおとずれとともに、そろそろアイツが食べたいという機運が高まったのは、2014年の暮れ近く。多くの日本人が冬になるたび求めてやまず、この時期カメラを向けられると思わずアイツをマネて指をチョキにしてしまうほどのアイツとはもちろん、カニのことだ。カニ機運が極限に達したわれわれ調査隊は、全国の自治体を徹底調査。そうして鳥取県境港市で発送期間限定「浜茹で松葉がに」を発見!歓喜のダブルピースをしながら申し込んだのだった。
「松葉蟹」とは、マツバガニという種類のカニがいるのではなく、いわゆるズワイガニである。「冬の味覚の王様」と称賛されるズワイガニは、その人気の高さゆえに、客の取り合いが激しいので、各地で勝手なブランド化がこころみられているが、松葉ガニは山陰地方の日本海で獲れたオスのズワイガニにあたえられる地域ブランドだ。認定の最低基準として、冷凍状態で入荷されていないことが条件づけられており、外国から輸入した冷凍ズワイと一緒にされちゃ困るというプライドも、地域ブランド化の背景にあるのかもしれない。いずれにせよ松葉ガニの称号は、王のなかの王という意味を持つにちがいない。
比較対象と言っては失礼だが、「浜茹で紅ずわいがに3枚入り」も同時に申し込んだ。ベニズワイガニ(Chionoecetes japonicus)はズワイガニ(Chionoecetes opilio)の近縁種である。松葉と紅、どちらも10,000円の寄附で贈呈される(ふたつ同時の場合は30,000円以上)が、松葉ガニがソロなのに対して紅ズワイガニはトリオ編成……グループアイドル全盛の昨今、集団ならではの実力もあなどれないにちがいない。

貫禄たっぷりの松葉ガニと華やかな紅ズワイガニズ

境港市のふるさと納税のシステムは法改正前の2014年度時点ですでに非常に洗練されており、サイトの利用および申し込み手続きがしやすいだけでなく、自治体の個別対応も親切で好印象だった。早くからふるさと納税の取り組みに本腰を入れていたようで、すばらしいと思う一方、鳥取県という過疎の深刻な土地柄の哀愁も見え隠れする。

カニ梱包画像

ともあれ商品が届いたのは申し込みの翌2015年1月中旬。指定の日に、提供元の川口商店さんからクール宅急便で送っていただいた。冷凍ではないので、到着から2日以内に完食してくださいとのこと。「松葉がに」シールの箱を開けると、氷の上にビニールのベールにつつまれたカニさまのお姿がいきなり拝見できる。ふるさと納税への御礼状も添えられていた。「紅ずわいがに」のほうも同様で、トリオが仲よく箱におさまっていた。

カニ開封画像

重さは、松葉ガニが677g。食後に殻の重量から引いた重さ(おおよその身の重さ)は209gだった。身がスカスカだったわけではなく、殻が分厚くて実際かなりズッシリと重量感のある立派なカニさまだ。紅ズワイはそれぞれ534g、545g、564gで、身の重さはおおよそ334g、366g、354gと推計された。こちらは明らかに殻が薄く、しかし身はよく詰まっている印象だった。紅ズワイが格下あつかいされがちな理由として、身の少なさが挙げられるが、そう考えると今回のカニたちの量的なバリューに関しては紅ズワイ組に軍配が上がるかもしれない。

いざカニ三昧の饗宴へ!

「浜茹で」なので、どちらもすでに真っ赤にボイルしてある。箱から出したら即ひたすら喰うのみだ。

松葉ガニボイル画像

この日のために用意した調査隊の秘密道具「カニチョキ」なる専用ハサミ(ただし使いづらい)で、まずは松葉ガニを解体する。甲羅をはがすと、たっぷり詰まったミソが現れ、だれからともなく歓声が上がった。カナダ産あたりのズワイとくらべて明らかにミソが多い。ミソの味はじつに濃厚で、ふくよかな海の香りがする。苦手な人にも一口は食べてもらいたい味だ。

松葉ガニハサミや身ぎっしり画像

肉のほうはどうだろうか。専用ハサミで松葉ガニの頑丈なハサミに挑みかかり、身をほじくり出して口にすれば、繊維が強く、歯ごたえのしっかりした素敵なマッスルだったが、味わいは淡泊。それでも標準的なズワイよりは上を行っていると見る。脚のほうもけっこう繊維がしっかりしていて、なによりムッチリぷりぷり。なかなかグラマラスで、お高いカニの脚に期待される程度のボリューム感はあった。味もなかなかのもので、まず美脚と評してよいだろう。

松葉ガニカニミソ画像

この松葉ガニの楽しみ方としては、たっぷりのカニミソを活かす食べ方がおすすめだ。ほぐした身をミソであえてみると、カニミソの濃厚な風味とあいまって、より肉のうまさが引き出される気がする。

紅ズワイガニボイル画像

つづいて紅ズワイガニをためしてみた。食べる順番をまちがったかもしれない、というのが率直な感想だ。松葉ガニのあとでは、どうしても全体的に風味が薄く感じられてしまった。さらにわれわれ調査隊のミステイクは、松葉に夢中になっているあいだずっと、紅たちを氷のなかに放置してしまっていた点だ。これにより、身が水っぽくなってしまい、いっそう味気ないかんじにさせてしまったのかもしれない。

紅ズワイガニ身とミソ画像

結果として、大味なタラバガニとあまり変わりのない印象になってしまった。おまけにミソの少なさがわびしい。しかし紅ズワイは3人組である。その上、みっしり身が詰まったナイスバディな子たちである。多少のミソの足りなさは大目に見るべきで、この人数と肉体のボリュームこそが魅力であろう。今日中に食べきらねばならぬとの使命感から、調査隊は必死で紅たち全員をたいらげたが、体中がカニになったような気分だった。調査に使ったオフィスは翌日もまだカニのにおいがしていた。

教訓……カニはほどほどが一番

今回われわれ調査隊は調子に乗って30,000円の寄附でふたつのカニ・プレゼントを同時ゲットしてみたわけだが、これはまったくおすすめしない。賞味期限もごく短いので、10,000円の寄附でどちらかひとつ、あるいはカニでない特産品と同時にすべきだ。
松葉ガニと紅ズワイガニ、どちらがおすすめかと言えば、それぞれによい点があるので一概には言えない。家族が少ないご家庭で高級なカニをじっくり味わいたいなら松葉、家族が多いご家庭でたっぷりカニを食べたいなら紅というかんじだろうか。松葉ガニはそのまま食べるべきだが、紅ズワイガニは鍋にしてもよいだろう。

松葉ガニ

なにはともあれ、われわれ調査隊の冬のカニ欲求を必要以上に満たした今回の「やってみた」。隊員のひとりは帰宅後、おならまでカニのにおいがしたことに驚いたというが、それはまた余談中の余談。ふるさと納税でお得だからと言って、あまり無茶はなさらぬように!


2015年9月7日

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